双極性naoの「てにをは」

双極性障害のnaoが伝える、ことばの力と闘病の記録。

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作家・石田衣良さんが、否定的な私に手を差しのべてくれた話

みずたまなおです。

こんにちは。

 

今回は、線引きについてのお話です。

どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

 

 【目 次】

 

 

僕たちの未来

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きっかけは、わずか1㎝

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みなさんには、大切にしている本はありますか?

 

私には大切にしている文庫本が1冊あります。

その本はきっと手放すことなく、ずっと私の手元にあることでしょう。

 

2012年12月、私がうつ病になってまもなくのことです。

それは誰かに勧められた訳でもなく、たまたま書店で手に取った本でした。

平積みされるような特に目立つところではなく、お店の奥の棚の上の方に並んでいました。

 

手を伸ばし、私はその1冊の文庫本を取りました。

読みたいと思って手に取ったのではなく、少し気になって手に取ったのです。

それは、タイトルが少し気になったからです。

 

『空は、今日も、青いか?』

どうしてこの人はこんな当たり前のことをタイトルにしたのだろう。

空は青いに決まっているのに、何でわざわざ聞いてくるのだろうかと、思いました。

 

著者は、石田衣良さん。

テレビドラマ『池袋ウエストゲートパーク』や映画『アキハバラ@DEEP』などの原作者で、2003年に『4TEEN フォーティーン』で直木賞を受賞した、人気の作家さんです。

 

棚に並んだわずか1㎝ほどの背表紙を見て、本を手に取った瞬間、「私はこの本を買う」とはっきりとわかりました。

ビビビっときた、というよりも出会い頭の事故のような感覚でした。

 

私はその本を買って帰りました。

でも不安定な状態が続いたからか、残念ながらすぐに読もうという気分にはなれませんでした。

 

3ヶ月あまり経った2013年3月、私はようやく、置いたままになっていたその本のページを開きました。

 

その本は小説ではなく、エッセイ集でした。

2004年から2005年にかけて、若者向けフリーペーパー「R25」に掲載されたものを文庫化したもの。

1冊の中に57もあるエッセイの、一番最初に掲載されているエッセイに、私は心を動かされたのです。

 

組に分かれず

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タイトルは『組に別れず』。

当時流行っていた、「勝ち組」と「負け組」についての話です。

 

その内容が、当時の私にとっては非常にタイムリーで、何か今までに味わったことのないような感情にさせられたのです。

身体の内側が一気に熱くなり、腸の辺りが小刻みに震えさせられているような。

 

うつ病で休職という、全く先の見えない不安の中で生活していた私にとって、その内容は、ひとつの答えだと感じたのです。

 

このような書き出しで始まります。

勝ち組負け組と簡単に人をふたつに分けて、浅いところでわかった顔をする時代になってしまった。大企業であるか、中小企業であるか。ホワイトカラーかブルーカラーか。年収やボーナスが同世代の平均以上か、以下か。線引きはどんどん細かく、世知がらくなっていく。無数に引かれた線で区切られた狭い場所に、ほんとうにぼくたちはうまく収まるものだろうか。

かつてはよく耳にした「勝ち組負け組」という言葉。

今となってはあまり聞かなくなったものの、不意にそう発言をする人に遭遇することがあります。

私は度胸がないので、直接聞くことはできないのですが、本当のところ私は問いたいです。

「あなたにとっての勝ち組・負け組とはなんですか?」と。

 

どういうわけか、私たちは未だにいろいろな「平均」を知りたがります。

私もこの本を読む前はそうでした。

「20代 年収 平均」などのワードを検索していました。

驚いたのが、「20代」と入力しただけで、同じような他の候補ワードが表示されること。

当時の私も含め、そんなことを調べて一体なにになるのかよくわからないのです。

果たして、平均より上だったら勝ち組、下だったら負け組なのでしょうか。

 

石田衣良さんはこのように続けています。

人は誰でも、ある部分で勝ち、別な部分で負ける。どれほど強運で才能に恵まれた人でも、必ず失うものがある。また逆に、すべてを失ったという人にだって、輝くような時間はきっとやってくる。

  ( 中 略 )

これを読んでいるきみは、ひとりの人間で数字ではない。統計上の数字は単なる平均にすぎない。しかも、つねに過去と現在だけしか映さない数字なのだ。

たったひとつだけの物差しで、勝ち組・負け組と判断することは、浅はかな考え。

結局は誰かと比べて自分が優位に立ちたい、安心したいという心理から起こるものなのでしょう。

過去と現在だけしか映し出さない統計データだけれど、未来のことは誰にもわからない。

将来は予測がつかない分、いろいろな可能性が広がっているのだと、私は信じています。

 

私に必要なものは…

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エッセイの終盤で石田衣良さんはこのように書いています。

人がうらやむような成功はしなくてもいい。けれど、世の中の厳しい風雨をしのげる、自分だけの心地よい場所をつくろう。それができれば十分。そう悪くない人生になるだろう。そのためにぼくに必要なのは、そこそこの生活資金とたくさんの本だった。

 私はこの文章を読んで、とても共感しました。

それは当時の私が置かれた、不安でいっぱいの状況で読んだからに他ありません。

もし、うつ病になっていなかったら気に留めることなく、読み進めていたことでしょう。

 

それまでの私は、大きな挫折をすることなくやって来ました。

そして、それなりの規模の会社に就職しました。

もしかしたら、誰かの目には私のことを羨ましく思っていたかもしれません。

ところが一転して働けなくなり、先の見通せない不安の中で毎日過ごしていました。

この文章を読んで、否定ばかりしていた自分自身に対して、「大丈夫だよ」と、そっと手を差しのべられたような気がしました。

 

 

 

ただ、石田衣良さんが言う「ぼくに必要なのは、そこそこの生活資金とたくさんの本」という部分が引っ掛かりました。

「私にとって必要なのは一体なんだろうか」と。

 

お金はあるに越したことはないけれど、特に贅沢しなければ「そこそこ」で構わない。

では、石田衣良さんの「たくさんの本」というところを私自身に当てはめて考えてみると、一体何になるのだろうか。

 

答えは、4年が過ぎた今も見つかっていません。

そう悪くない人生を送るために、私はその答えを探しながら今日を生きているのです。

 

おわりに

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あてもなく入った書店で、たまたま手に取った1冊の文庫本が私の生涯をともにするであろう1冊になりました。

それはまさに、出会い頭の事故のようなものです。

 

以来、このような考え方をする作家はどんな小説を書くのだろうと、何十冊もの本を読みました。

私の最も好きな作家です。

 

「組に分かれず」

それは優劣だけに当てはまることではなく、病気の有無、障害の有無にも当てはめて考えられるものだと私は考えています。

 

 

空は、今日も、青いか? (集英社文庫)

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